大会長挨拶
神戸市立医療センター中央市民病院歯科口腔外科 田中義弘
第19回日本有病者歯科医療学会学術大会・総会を開催するにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
大会のテーマは「歯は健康の元、歯周病は万病の元」としました。
もともと「有病者歯科」(Dentistry for Medically Compromised Patient)というネーミングについては設立当初から いろいろなご意見がありましたが、「全身的な基礎疾患を有する患者に対する歯科疾患の予防、診断、治療について歯学と医学の協調のもとに考究すること」とされています。(学会誌創刊号1992年)
しかし、20年後の現在は人口の20%が高齢者となり、8020運動の成果によって65歳以上ほとんどの人が歯を有する時代となりました。兵庫県歯科医師会の調査によれば、8020達成者は医科疾患が優位に減少し、その結果だけではないでしょうが、健康長寿の方が増えています。
ただ、その残した歯牙が歯周病であれば 8020運動の「負の遺産」として心血管病、脳卒中、動脈硬化など「万病の元」として、生命に直接関係する危険因子の一つになると考えられるようになりました。これらの新しい知見は20代、30代から始まる歯周病が、十数年を経て50代以降になって生命を脅かす全身疾患の元になっているということであり、十年、二十年という長期にわたる息の長い臨床研究によるエビデンスが待たれます。(これらについてはシンポジウムで詳しく解説される予定です。)
一方、歯科側からの従来の視点である歯科治療をより安全にという「有病者歯科」は ますます大切で、中でも施設への往診・在宅診療では 全身管理に対する知識や経験がなければ、観血的処置には自信をもって臨めません。
このように医科歯科の共同戦線が求められる時代となり、その学際領域を持ち場とするこの学会はさらに翼を広げなければなりません。すなわち、抗血栓療法中の抜歯時の薬剤継続やビスフォスフォネート服用中の患者に対する対応など医学の進歩に伴って歯科が対応しなければならないことが次々と現れてまいります。その際大切なことは歯科にとって不都合なことだけを声高に主張するのではなく、頻度は少ないですが、歯科での医療行為で菌血症となり、患者に多大な迷惑をかけている感染性心内膜炎(IE)のガイドラインを歯科医師に徹底して広報することも学会の責任でしょう。
ところが、これら医科歯科の学際領域を担当する主な現場は病院歯科でありますが、これらの施設はどんどん縮小され、閉鎖されています。ここ5~6年の間に施設数が22%減少というひどい有様です。超高齢社会に向かって一番必要な現場から歯科が後退を余儀なくされている現状を歯科界はどうみているのでしょうか。歯科大学や歯科医師会は「有病者歯科」の人材を育成し、過当競争している歯科医を再教育して、こちらに振り向ける具体策はないのでしょうか? そのためには受け皿である病院歯科の拡充が第一であり、人材の育成が早急に求められています。そのためにも病院歯科の採算性を考慮した診療報酬改定がまず必要です。それなしには病院歯科の再生はありえません。
これからの歯科医にとって必要な「有病者歯科」の拡充に本大会が少しでもお役に立てばと思い、以下のプログラムを用意いたしました。
○特別講演:
分子生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一先生に「生命を解くキーワード、それは“動的平衡”」というテーマで、お話いだくこととしました。福岡教授は「生物と無生物のあいだ」で新書大賞を受賞され、マスコミでもご活躍の方で、生命についてユニークなお話をお聞きできるかと思います。
○シンポジウム:
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 顎口腔頚部医科学講座 健康増進歯学分野教授 西村英紀先生には「歯周医学最前線―これまで何がわかったか―」と題するシンポジウムを企画していただき、ご自身は「歯周病が糖尿病の合併症としてでなく、その危険因子と考えられるようになった背景」についてお話し願い、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻社会医療学講座教授 斉藤俊行先生には「メタボリックシンドロームと歯周病の相互関連性」を、新潟大学歯学部口腔生命福祉学科口腔衛生支援学講座教授 山崎和久先生には、「冠動脈疾患リスク因子としての歯周疾患を考察する」と題して歯周病が全身に悪影響を及ぼす最新知見をお聞かせいただくことになりました。
○学術教育研修会:
京都大学こころの未来研究センター教授の河合俊雄先生に「医療と心理療法の接点」について歯科衛生士さんにも分かりやすいお話をお願いしています。
○教育講演:
日本大学歯学部摂食機能療法学講座准教授の戸原 玄先生に「摂食.嚥下障害の評価と訓練の実際」について分かりやすくお話していただけると思います。
○ランチョンセミナー: 日本歯科大学新潟病院口腔外科准教授 田中 彰先生にお願いしています。
また、話題の抗血栓療法、ビスフォスフォネート、口腔ケアについては演題が多数の場合は、議論が深まることを期待して それぞれをまとめる予定です。
春の神戸は山、海、歴史散策、グルメめぐりなど楽しみがたくさんあります。多くの皆様の学会参加を心よりお待ちしております。
第19回日本有病者歯科医療学会学術大会・総会を開催するにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
もともと「有病者歯科」(Dentistry for Medically Compromised Patient)というネーミングについては設立当初から いろいろなご意見がありましたが、「全身的な基礎疾患を有する患者に対する歯科疾患の予防、診断、治療について歯学と医学の協調のもとに考究すること」とされています。(学会誌創刊号1992年)
しかし、20年後の現在は人口の20%が高齢者となり、8020運動の成果によって65歳以上ほとんどの人が歯を有する時代となりました。兵庫県歯科医師会の調査によれば、8020達成者は医科疾患が優位に減少し、その結果だけではないでしょうが、健康長寿の方が増えています。
ただ、その残した歯牙が歯周病であれば 8020運動の「負の遺産」として心血管病、脳卒中、動脈硬化など「万病の元」として、生命に直接関係する危険因子の一つになると考えられるようになりました。これらの新しい知見は20代、30代から始まる歯周病が、十数年を経て50代以降になって生命を脅かす全身疾患の元になっているということであり、十年、二十年という長期にわたる息の長い臨床研究によるエビデンスが待たれます。(これらについてはシンポジウムで詳しく解説される予定です。)
一方、歯科側からの従来の視点である歯科治療をより安全にという「有病者歯科」は ますます大切で、中でも施設への往診・在宅診療では 全身管理に対する知識や経験がなければ、観血的処置には自信をもって臨めません。
このように医科歯科の共同戦線が求められる時代となり、その学際領域を持ち場とするこの学会はさらに翼を広げなければなりません。すなわち、抗血栓療法中の抜歯時の薬剤継続やビスフォスフォネート服用中の患者に対する対応など医学の進歩に伴って歯科が対応しなければならないことが次々と現れてまいります。その際大切なことは歯科にとって不都合なことだけを声高に主張するのではなく、頻度は少ないですが、歯科での医療行為で菌血症となり、患者に多大な迷惑をかけている感染性心内膜炎(IE)のガイドラインを歯科医師に徹底して広報することも学会の責任でしょう。
ところが、これら医科歯科の学際領域を担当する主な現場は病院歯科でありますが、これらの施設はどんどん縮小され、閉鎖されています。ここ5~6年の間に施設数が22%減少というひどい有様です。超高齢社会に向かって一番必要な現場から歯科が後退を余儀なくされている現状を歯科界はどうみているのでしょうか。歯科大学や歯科医師会は「有病者歯科」の人材を育成し、過当競争している歯科医を再教育して、こちらに振り向ける具体策はないのでしょうか? そのためには受け皿である病院歯科の拡充が第一であり、人材の育成が早急に求められています。そのためにも病院歯科の採算性を考慮した診療報酬改定がまず必要です。それなしには病院歯科の再生はありえません。
これからの歯科医にとって必要な「有病者歯科」の拡充に本大会が少しでもお役に立てばと思い、以下のプログラムを用意いたしました。
○特別講演:
分子生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一先生に「生命を解くキーワード、それは“動的平衡”」というテーマで、お話いだくこととしました。福岡教授は「生物と無生物のあいだ」で新書大賞を受賞され、マスコミでもご活躍の方で、生命についてユニークなお話をお聞きできるかと思います。
○シンポジウム:
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 顎口腔頚部医科学講座 健康増進歯学分野教授 西村英紀先生には「歯周医学最前線―これまで何がわかったか―」と題するシンポジウムを企画していただき、ご自身は「歯周病が糖尿病の合併症としてでなく、その危険因子と考えられるようになった背景」についてお話し願い、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻社会医療学講座教授 斉藤俊行先生には「メタボリックシンドロームと歯周病の相互関連性」を、新潟大学歯学部口腔生命福祉学科口腔衛生支援学講座教授 山崎和久先生には、「冠動脈疾患リスク因子としての歯周疾患を考察する」と題して歯周病が全身に悪影響を及ぼす最新知見をお聞かせいただくことになりました。
○学術教育研修会:
京都大学こころの未来研究センター教授の河合俊雄先生に「医療と心理療法の接点」について歯科衛生士さんにも分かりやすいお話をお願いしています。
○教育講演:
日本大学歯学部摂食機能療法学講座准教授の戸原 玄先生に「摂食.嚥下障害の評価と訓練の実際」について分かりやすくお話していただけると思います。
○ランチョンセミナー: 日本歯科大学新潟病院口腔外科准教授 田中 彰先生にお願いしています。
また、話題の抗血栓療法、ビスフォスフォネート、口腔ケアについては演題が多数の場合は、議論が深まることを期待して それぞれをまとめる予定です。
春の神戸は山、海、歴史散策、グルメめぐりなど楽しみがたくさんあります。多くの皆様の学会参加を心よりお待ちしております。